仕事もない、ノアも全員出払ってる中、二人掛けのソファには俺と。
は広い部屋のでかいソファの上で足をソファの上でおり曲げて小さくなって本に夢中になっている。は最近変わったものに興味を持ち始めていて（俺には全く理解できない）その関連の本がたまたまあったから買ってきてやったのはつい一昨日の話。ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んで「ティッキィ大好きー」なーんて言いながら頬にキスされたらそりゃ誰だって買ってきてよかったって思うだろ？でも今日、今この時間俺はこんな本を買ってきたことを後悔するんだ。
「なーー」
「んー？」
「俺今すーっごく暇なんですけど」
「じゃあ本でも読めば？」
「学無ぇもん」
「そんなの馬鹿なティキが悪いのよ」
俺に視線を向けることもなく冷たくいう。ちょっとからかってやるつもりでかぎりなく胸に近い腰付近に腕をまわしてみるものの反応なし。
「ちぇー・・・。誰もいないなんてことめったにないんだぜ？」
「そうね」
「思う存分俺に甘えれるってことだぜ？」
「そうね」
「・・・・・ー、俺の話聞いてる？」
ちょいちょいっとのやわらかいほっぺた（本人曰くこの丸みが嫌いらしい）（触り心地がよくて俺はいいと思うけど）を人差し指でつつくと、急にの右手がのびてきて俺の人差し指をこれでもかっていうくらいぎゅっと掴んで、噛み付いた。
「おわっ！！」
「邪魔しないでよ、ティキぽんウザい」
「う、ウザ・・・！？」
嗚呼、思春期の娘をもった父親ってこんな気持ちなんだろうか・・・。
ウザいって言葉はまるで俺の能力のように筋肉を抜け、直接心臓へ突いてきた。
胸のあたりをおさえて本気で傷ついている俺を見て少し罪悪感が起きたのか本を追う目がこっちを見た。
「はぁ・・・」
俺の祈りがつうじたおかげでは一つため息をつくと本を閉じて俺を見た。
「べたべたするの嫌いだから普通に話すだけね？」
呆れたような少し困った顔で、でも俺への愛情もしっかりと忘れずに含めたその笑顔に嬉しくて小さいガキみたいにこくりと頷いた。
「じゃあ、さっきの本読んで気になったことがあるんだけどその実験してみない？」
「何の実験だ？」
「ビンタで人を殺せるかどうか」
俺は、一瞬、いや数秒、頭が真っ白になった。
の発言がいまいち理解できない。
ビンタで人を殺せるか？そんなもので人が死んでいたらさぞかし愉快・・・いや俺らの仕事が簡単すぎてつまんねぇだろう。夫婦喧嘩で妻にビンタされた旦那は全員死んじまうじゃねぇか。
学無しの俺でさえ少し考えればわかることなのにはそんなことに興味があるのか。頭がいいんだか、悪いんだかわかんねぇ。
「いや、お前ビンタってあのビンタだろ？」
「そうよ」
「あの腕全体の腕力と振り下ろすときの勢いにより手の平で他人の頬をうつアレだろ？」
「そうよ」
「そんなんで殺せるわけねぇじゃん。そしたら俺の能力どうなるんだよ」
「やだティキったら。誰も一発だなんて言ってないじゃない」
「え？」
くすくすと華麗に笑う。
「千手観音の往復ビンタよ」
そう、俺がに買ってあげた本は”国宝広隆寺の仏像”全巻（９冊）。
これはあくまで俺の推測だけど、今読んでるのがきっと千手観音とやらのページなんだろう。
「センジュ・・・カンノン・・・」
「そうよ。千手観音っていう仏像があってね、、手がいっぱいあるの。それ全部を使って往復ビンタするの。４２本しかないけど、往復したら８４回でしょ？けっこう痛いと思わない？」
いやいやいや、けっこうっていうかそれかなり痛いだろ。
俺はセンジュカンノンがどんなのかさっぱり想像がつかないけどとりあえずタコやらイカやらの４２本版の人間というちょっと不思議な人間のイメージしか思い浮かばなかった。それでも48回もビンタされたら誰だって死ぬほど痛いだろ。俺が心の中でつっこみを入れているとは嬉しそうな顔でくすくすと笑っている。
「で、でも所詮は仏像だろ？動けねぇから実験の仕様がねぇ」
「あら、何言ってるのティキ。別に手が４２本なくたって８４回あたしがティキにビンタすればいい話じゃない」
「え、ちょ、それって・・・」
ソファの上で慌てふためく俺にじりじりとが近寄ってくる。これじゃあ普段と逆だ。クッションで顔を隠す俺を組み敷いてが無理やりクッションをはぎとった。
「歯ぁくいしばれ」
「ただいまー。」
「あら、ジャスデビおかえり」
「今日しかいねぇの？」
「そんなことないけど？ティキもいるわよ？」
「またセクハラされたのか？」
「変態ティキ！ニヒヒヒヒ！！」
「そんなことないわよ。ちょっと二人で実験して遊んでたの」
「実験？何の？」
さて、ビンタで人を殺せるか否か。
（実験結果は彼女のみぞ知る）
Thank you for Noah's ark"!!
by miu [ s*k ]
2007.01.31