テスト1週間前というものは自分との戦い。 真面目に授業を受ける気持ちはあります。無遅刻無欠席無早退のちゃんですから。でも睡魔に勝てず、風紀委員長様に勝てず、今学期まともに授業を受けたといえるのは半分弱。 ノートは真っ白、頭も真っ白。 期末テストは大丈夫なのでしょうか。

このろくでもない日常

応接室通いをやめて4日。
雲雀くん怒ってるかな。でもいくら風紀委員長様がお怒りになろうともテストの結果はかわらない。彼は別にこんなテストくらいどうってことないのかもしれないけど成績崖っぷちの私にとっては天地がひっくり返るくらい勉強しなきゃいけないんだから。今の私の勉強だって他の人に言わせたら ふつう くらいなんだろうけど。応接室に行かない+赤点だなんて最悪のダブルパンチ。ん、でもダブルパンチっていうのはちょっと違うのかも。確かにけんかつよくないし、仕事もはやくはないけど風紀委員の仕事はこなしているんだから怒られる理由なんてないじゃない!!授業中応接室に呼びだされたり、放課後書類を渡しにいって夜までかえらせてもらえなかったりしたのは風紀委員の業務外であって、雲雀くんの気まぐれであって、私は悪くないのよ!!テスト期間になってから呼びだされてないんだから罪悪感を感じる必要なし!自分に言いきかせて机に向かうものの、ぜんっぜん集中できない。むしろ雲雀くんワールドにずるずるとひきこられちゃう。一人でいると思考はどんどんマイナスになっちゃって私の脳内ではついに雲雀くんに嫌われた。

「・・・っだー!!!!!」

耐えきれなくなってシャーペンをぽいっと投げてベッドにダイブ。安いベッドのスプリングがぎしとなってふるえた。
気にするなって思っても気になる、雲雀くん。たしかに傍若無人だしいじわるだしちょっと冷酷な一面もあるけど、それはあくまでただの一面であてやさしいところだってある。だから私は雲雀くんに呼び出されてるのだって嫌な顔しながらすごく嬉しかったし、毎日お弁当作るのだって楽しみだった。いじわるでやさしい雲雀くんのいる毎日が幸せだったんだ。
なんだかもう雲雀くんに会えない気がしてきてさみしくなっちゃったのと、あってないっていうのにあいかわらずこころの80%は雲雀くんで占められていてくやしいのでむしゃくちゃしてきた。

「・・・あーもう!雲雀恭弥の馬鹿やろーう!!」
「馬鹿は君だろう」
「ひえっ!!」

まさか返事が返ってくるとは思わなかった、しかも窓から。おばけかストーカーかと思ったけど、声の主はもちろん雲雀くん。気の利いた言葉が見つからなくてぱくぱくしてると奴は呑気に靴を脱いで、肩についた葉っぱを払って部屋の中をぐるりと見渡した。

の部屋って案外汚いんだね」

人の部屋におじゃましますの一言もなしに勝手に入ってきて言う言葉はそれだけ!?

「は・・・?」
「ワオ、自覚ないの?」
「あります!!あ、ります・・・けど」
「けど?」

ほかに言うことないの?

「他に言うことなんてないだろ?」
「読心術!?」
「顔に出てるんだよ」

全くって呆れて雲雀くんはベッドに腰かけた。さっきまでのマイナス思考とか傍若無人さとか雲雀くんの顔見たら全部吹っ飛んでいっちゃった。そのそっけない態度も、すこししか変わらない表情も、冷たいけど優しさがある声も、全部懐かしくてきゅん となってしまった。きゅん て何なんだ!あ、相手は雲雀くんじゃん!落ち着け私!!

「で、何」
「ななななにってなに!?」
「馬鹿野郎」
「え?」
「僕のこと馬鹿野郎って言ったよね?」

なんで って言われてもまさか雲雀くんに会えなくて八つ当たりに叫んでみました、なんて口が裂けても言えない・・・。

「や、それは、なんて言いますか、」

なんとか誤魔化そうと一生懸命考えるけど頭のなかパニックで全然思いつかない。

「さっさと言わないと咬み殺すよ」
「はひっ!言います言います!!」

さっきからちらちら見え隠れしてるトンファーで後頭部を強打されるより本音を言ってばかにされたほうがまし。
ベッドの上でちょこんと正座すると雲雀くんもベッドの上で胡座をかいた。
「・・・テスト期間始まってから、雲雀くんが応接室にこいって行ってくれなくてね」
「うん」
「風紀のしごとで行ってもひきとめてくれなくてね」
「うん」
「事務的なはなししかしてなくてね」
「うん」

おもったことをおもったままに全部はきだしてみた。言いながら頭の中ぐちゃぐちゃになっちゃってシーツをぎゅっと握ったら、雲雀くんは私の手をシーツから離してやんわりと握ってくれた。

「もしかして雲雀くんは私が応接室に通うの嫌だったのかなとか、静かになってせいせいしてるのかなとか思ったら悲しくなってきてね」
「うん」
「ずっとそのことばっかり考えてて勉強手につかなくて、なんか・・・すごいムカついた」

矛盾だらけの私の気持ちを全部言ったらちょっとすっきりしたかも。雲雀くんが手を握ってくれたおかげだよ、ありがとうって言おうと思ったら、雲雀くんが私の手を離してほっぺたを包み込んでくれた。私の顔がかあっと赤くなっちゃって恥ずかしい。もしかしてあれですか。ちゅーってやつですか!?

「ひばりく、いひゃいいひゃい!!!」

彼にそんな甘い期待をした私が馬鹿でした。私のほっぺたは今これでもかってくらいに左右にのびきってる。違う意味でほっぺた赤いよ。

「僕にムカつくなんて言ったのはこの口かい?」
「ひゅいまひぇん!ごめんなひゃい!!」

ひばりくんは案外あっさり離してくれて、私の顔はなんとか引っ張られる前に戻った。ほっぺた赤いし、じんじん痛い。雲雀くんはやっぱり意地悪だ。

「君の成績が悪いから勉強に集中させてやってるのに」
「・・・へ?もしかして呼ばれないのって私のため?」
「君のためじゃないよ。赤点とる風紀なんて風紀じゃないからね。君を解雇しなきゃいけなくなる」
「解雇!?」

解雇なんてされちゃったら応接室にいけなくなるし、雲雀くんに会えなくなるし、なによりつながりがゼロになっちゃう!!

「かかかか、かいこって・・・!」
「そうならないように、勉強時間を作ってやってるんだよ。君が来ないせいで雑用がたまってるんだから」
「・・・ごめんなさい」
「これからテストまで毎日勉強道具を持って応接室に来てね」
「は?」
「君が来ないと、掃除する人間がいない」

雲雀くんはそう言ってぷいとそっぽ向いちゃった。でもね、耳がちょっと赤いのは見えてるんだよ?

「お手柔らかに、雲雀先生」
「赤点とったら咬み殺すから」





本当は君に会いたかったから
(我慢出来なくて会いにいったんだ)

2007.10.29
title byBIRDMAN