窓の外は生憎の雨で、ずっと前から約束していた公園で弁当を食べるっていう計画は泣く泣く中止。
俺もノアの仕事があったし、最近伯爵(まぁ実際は俺らだけど)の動きが激しくなってきたせいでも毎日世界中を任務で飛び回らなきゃいけなかったから恋人として会えたのは3ヶ月ぶりくらい。
次に会ったときに公園でお弁当食べようねって約束していたものだから、は最後までどうしても行きたいって駄々こねてた。
そりゃあ俺だっての我侭をなるべく聞いてやりてぇし、会えるときだって少ないんだから少しでも笑顔が見たいよ。でもな、さすがにこの雨の中公園に行ったら風邪はひくわ、美味そうな弁当が台無しになるわで俺にとっては非常に困る。
特にが風邪を引いたら。
つきっきりで看病して弱ってるを見たいけど、途中でお互い仕事が入ったらそれでさよなら。弱ったを看病するのがエクソシストの奴らだと考えると、リストに載ってなくても五臓六腑全て引き抜いてやりたくなるほどムカつく。
そんなことを言ったらが怒るから言わねぇけど。

なんとか納得はしてくれたものの、やっぱりは拗ねてずっと窓の外を眺めて「晴れろー晴れろー」と空に向かって怨念をとばしていた。
それが5分前。

俺がコーヒーを入れて戻ってきたときにははさっきとうってかわってぼーっとしていた。
テーブルにの分のカップを置いて、ソファーに座る。じっとを見ているとぽつりと小さな声で呟いた。

「神様が泣いてる?」

「は?」

この言葉にはさすがの俺も驚いて思わず声が出た。その声に反応してくるっとこっちを振り返った。ヤベ、怒られるかも。

「ティキ、神様が泣いてるわ」

は怒るどころか泣きそうな声で俺に訴えかけてきた。そんな可愛らしい顔されると放っておけなくなるだろ?
自分の分のコーヒーをテーブルに置いて、の後ろへ座って小さな体を抱きしめた。床に座っていたせいで体は冷え切ってしまっている。

、急にどうした?」

子供をあやすようにゆっくりと話すとが体の向きを変えて俺と向かい合った。それから、小さな頭を俺の胸にぐりぐり押し付けてくる。

「雨が降るのは神様が泣いてるからなのよ」
「そうなのか」
「私がティキを困らせたから神様が悲しんでるのよ」

おいおい、ちょっと待て。なんで俺を困らせると神様が泣くんだよ。

「俺は困ってねぇから大丈夫だよ。といられるだけで幸せだし」

な、と言うとぐりぐり押し付けていた顔をあげて俺を見た。大きな目からはいまにも涙が零れそうだ。

「ほんとに?」
「ほんと。駄々こねるも拗ねるも可愛いよ。ただ」
「ただ?」
「泣かれるのはちょっと困るな」

冗談まじりでそう言うとがくすくすと笑ってくれた。今日初めて俺に見せてくれた笑顔。3ヶ月ぶりの笑顔。
笑ったせいで溢れそうだった涙が一粒、の頬を伝った。それを舐めとってやると、くすぐったいと言って身をよじる。
そんなも愛しくて、可愛らしくて、ほんとにこいつは存在自体が反則だ。


「なぁに?」
「晴れた日に公園に行こうな」
「うん」
「で、雨の日は・・・」

俺は素早くの膝裏と背中に手を回してお姫様抱っこをして立ち上がった。きゃあ、とが驚いて声を出したけどおかまいなし。また痩せたんじゃねぇかって思うくらいの細い体を抱き上げたまま、ベッドルームへと向かった。


...
(雨の日だっていいじゃないか)
give for misasama!!
2007.04.02