「お前バカじゃねぇの!?」
「バカはがっくんのほうでしょ!!!」

はあ‥もうホンマに、昼休みまでうっとおしいわ。
なんでお前らみたいな超音波カップルと肩並べて弁当食わなあかん?普通に考えておかしいやろ。
しかも俺を真ん中にすんなや。そして俺を真ん中にして喧嘩すんなや。
アカン、右からも左からもアホみたいな声聞こえてきて耳おかしなってしもた。

「なんで卵が半熟じゃないんだよ!」
「半端なものあたしは作らない主義なのよ!半端なものが好きだからがっくんも半端なのよ!!」
「クソクソ!」
「バカバカがっくん!」
「なあ、俺帰ってええ‥?」
「「駄目!!!」」

超音波が耳に響くわ。
しかも喧嘩の原因はお手製の弁当の玉子焼きが半熟じゃなかったことについてなんて、砂糖ぶっかけたろかこのアホカップルが。
俺かて毎日可愛い彼女の弁当食ってるけど今日は 熱出してんねや。学校行っとる場合ちゃうやろ。朝からめっちゃ早退する準備万全やったのに超音波カップルに昼休みのアポ無理やり取られてん。相談あるから来い言われてん。
しかも来なかったら今度の試合で俺跳ばん言われたらさすがに困るやろ。
別におかっぱが跳ばへんくてもええんやけど相手は青学やし、 の前で負けるわけにもいかへんし。
こうやって大人しゅう二人の相談聞いてやっとるっちゅーに‥。

「えー加減にせえ」

さっさと本題に入りぃや。
我慢出来へんくなってもうて二人の耳をぐいっと引っ張ってやった。
見事に二人とも泣き叫びおるわ。離してやったら耳押さえて黙りこくるし。
ここまで似とるカップルも珍しいとちゃうん。何を相談する必要があんねん。どーせ考えること同じやろ。

「相談て何や」
「んーと‥ね実は・・・」
待てよ!俺が言うって決めただろ!!」
「がっくんが言うの遅いからあたしが代わりに言ってやるんじゃない!!」
「なんだと!?」
「何よ!?」

さっきと状況変わらへんやん。ほんまに岳人といい といいこいつら脳みそちゃんと詰まっとるんかいっぺん確認してみたいわ。
も岳人と付き合う前はもっとこう、大人しいゆーか可愛らしい感じやったはずやろ。まぁ にはかなわへんけど。
あー、こんなうるさいカップルやのうて に会いたい。

「おっしー、顔が変態くさいよ」
「コイツがあの顔するときは彼女のこと考えてんだよ」
「妄想?うわ、ますます変態。えろ眼鏡」
「やかましわボケ。3秒以内に用件言わんと二人そろっておかっぱ頭にするぞ」

がしいぃっと二人の頭鷲掴みにして言うとが今にも泣きそうな顔で俺に「おかっぱだけはいやあぁぁ」と泣きついて来おった。お前にそんなんされても欲情せーへんっちゅーに。しかもお前の彼氏おかっぱやぞ。けったいな前髪しよるし。
自分の彼氏に失礼な発言やと思わへんあたりがまたアホや。岳人も自分バカにされとること気付いてへんし。

「で、早よう言えや超音波カップル」
「(超音波て何だよ・・・!)あのな、俺ら今もめてるんだけど」
「そうそう。でもどっちも自己主張激しいでしょ?」

アホか、お前らは自己主張が激しいんやのうて自己中すぎるだけや。

「だから侑士に決めてもらおうと思ったんだよ!」
「あーそーでっか。で、そのもめごとは何や」
「「携帯をどっちの会社に変えるかについて」」

は?
俺は一瞬自分の耳を疑ごうてまったわ。

「どーゆーことや」
「だからあー、昨日がおそろいのストラップ買ってくれたんだけどさ、やっぱり携帯もおそろいにしたいって話になって俺がの誕生日に携帯買ってやる約束したんだけど」
「あたしとがっくん今携帯の会社違うからどっちかが解約しなきゃいけないのよね」
「俺もも自分の使ってる携帯の会社がいいからどっちも譲りたくねぇんだよ」
「そうそう。で、収集つかないし、でもおそろいにしたいから、ここは忍足に決めてもらおう!って話になったのよ」

ねーって・・・ねーって語尾にハートマークつけて笑い合われても俺はため息しか出てこんわ。
せっかくの昼休み、ちゅーか との時間を、お前らのそんなアホな揉め事で潰れたんか。

「ちなみにもちろん毎日長電話できるように今流行りのウィルコムは持ってるの!」

がほらほらぁーって俺の目の前に携帯を突き出してくる。なんやテカテカしたもんべったべった貼りよる。なんで二人のイニシャル携帯につけとんねん。お前どんだけこのおかっぱ好きなんや。

「これだとね、同じ会社同士だと通話無料なの。だから毎日がっくんと電話できるの」

ああ、そういえば毎日毎日部活終わった後岳人がその携帯でお前といちゃついとったなぁ。毎日毎日よぉやるわ、通話代いくらかけとんねん思ったけど、そういうことか。
ちゅーか・・・

「お前らアホやろ」
「「アホちゃいますー」」
「・・・帰らせてもらうわ」

アホや、こいつらほんまのアホや。超音波アホアホカップルや。
もう付き合っとれん。惚気話なんかええで に会いたい。なんかの顔見とる暇あれへんのや。熱あんねんで、そんなん看病ついでにぱくりやん。常識やん。あーもう我慢出来へん。
俺が立ち上がると両足を二人にがしっと掴まれた。・・・うっとおしい。蹴り飛ばしたろかな。

「帰らないでー」
「せめてどっちの会社にするか決めてから帰れよー」

俺は黙って二人の携帯を見た。
・・・せやな、一言言えば帰れるんやもんな。

「間をとってauにしたらええ話やろ」
「・・・そっか」
「それもそうだな」

解決ーって言うて二人は俺から離れて抱き合っとる。こんな簡単なことくらい自分らで決めれるやろが。
説教してやろ思たけど、 んとこ早う行きたいし、何よりいいこと聞かせてもろたし、今回は怒らんとくわ。
まぁサルみたいな女でも一応大事なパートナーの彼女やしな。喧嘩されて岳人が飛ばへんくなるよりはマシや。

「俺はもう行くで」
「おう!彼女によろしくな!」
「お大事にって言っといてー」

俺は返事の代わりにひらひらと手を降って屋上を後にした。
ん家行く前に携帯会社行って二人分のウィルコム買ってったろ。



携帯電話闘争

(毎日電話は当たり前)



2007.06.11