お昼休みといえば、私の至福の時。一人暮らしだからお弁当の中身全部わかっちゃってさらに味までわかっちゃってるけどそれでもあの開けた瞬間が楽しいの!今日は早起きしたから冷凍食品ゼロ。嬉しくてスキップしながらリナリーの席までいったらリナリーは優しい笑顔で迎えてくれた。あの笑顔こそまさに天使の微笑みってやつだよ。年下彼氏がキュンとなっちゃう気持ちもわかる。リナリーみたいな彼女にお弁当つくってもらえたら幸せだよね、ウォーカー君!リナリーの机にお弁当を置いて、前の席の椅子に座って彼女と向かいあうように座った。リナリーはまだお弁当を出していなくて先に中国茶を飲んでた。毎日可愛い水筒に入れて中国茶を持ってくるんだけど、最近では私も飲めるようにコップを余分に持ってきてくれる。優しいなって思ってるとリナリーがいつものように鞄からコップを取り出して注いで私にはいって渡してくれた。ありがとうってそれを受け取ってゆっくり飲む。中国茶の独特の味が口いっぱいに広がって思わずほうっとため息をついた。

、なんだか今日は嬉しそうね」
「そーお?」
「うん、すごく」
「だーってお弁当の時間大好きだもん。リナリーのお茶も飲めるし、ごはんも食べれるし」
「だーってちゃん世界史の時間よだれたらして寝てたんだもんね」

後ろから聞こえた声にそんなこという奴は誰だ!?と思って振り返ったらそこにいたのはラビ。にやにや笑って嬉しそうにしてる。ラビだって居眠り常習犯のくせに!

「いつ私がよだれたらしてたっていうのよ!」
「3時間目に決まってるさ。ずーっと寝てていつ起きるのかなーって思ってみてたら口元からよだれが」

ぷぷって小馬鹿にしたような笑い方をしながら私の寝顔の真似までしてきた。リナリーもくすくす笑ってそんな顔してたわねって言ってるから悔しいけど多分私はよだれをたらしてアホ面で寝てたんだわ。でも、ラビにだけは馬鹿にされたくない!

「ラビのばか!」
が悪いんさ。あんな顔して寝てるから。ユウもアホだって言ってたさ」
「ユウに言われるのは別にいいのよ!」
「それ差別!差別反対!」
「差別じゃないわ。慣れてるだけ」
「あ、確かに」

ユウは私とラビにすぐ怒るもん。剣道部部長だか何だか知らないけどさ、毎日毎日何かあるとすぐ木刀持ってくるんだから。竹刀よりも木刀の方が痛いことわかってあれを携帯してるんだからタチが悪い。

「ねぇ、ラビはに何か用事があったんじゃないの?」
「あ、忘れてたさ」
「ばーか」
「うるせ」
「で、何?」
「保健医がのこと呼んでたさ」

保健医と聞いてぱっと私のほっぺたがあつくなった。リナリーはそれを見逃してくれなくて、心底面白そうに笑ってた。普段は天使のような笑顔なのに保健医のこととなるとすぐあの腹黒そうな、何かたくらんでいますみたいな顔になるんだから。実際面白がってるわけだから意地悪よ。そんな私とリナリーの反応で何かあると勘付いたラビがリナリーみたいな笑顔を浮かべた。あー、嫌な予感しちゃうよ。思った通りラビは人差し指で私のほっぺたをつんつんつつきながらにやけ顔。

「やっだちゃんってば、もしかしてのもしかして?やーらしー」
「はぁ!?何その口調、気持ち悪い」
「んまー、そんな面白いことなんで俺に言わなかったんさ」
「そういう反応されるってわかってたからよ」

この暇人めって言ってさっさと席を立って教室を出た。あんなところにいたら根掘り葉掘り聞き出されるに決まってる。別に話したいとも思わないし、むしろ詮索されたくないことだから。だからリナリーにしか言わなかったのに。どうせ今頃ラビは私が座ってた席に座ってリナリーにいろいろ聞き出して私が教室に帰った頃には笑ってるのよ。やーらしいわねってまた気持ち悪い声でからかうのよ。ああ、腹立たしいあのばかうさぎ!第一なんであいつもわざわざラビなんかに伝言頼むのよ!普通にメールして来ればいいじゃない!普段毎日電話もメールもしてくるくせに今日に限ってなんで伝言!ムカつくのと恥ずかしいのでずかずか歩いてたらいつの間にか保健室に着いた。全ての元凶はこのドアの向こうにいると思うとさらにムカついてドアを蹴り飛ばして開けてやった。

「おいドア壊すなよ」

ドアの向こうの元凶は開く前から私だってわかってたみたいで机から顔も上げずにそれだけ言った。

「なんで私が怒ってるかわかんないの?」
「・・・今日メールじゃなくて、伝言にしたから?」
「わかってるならメールしてよ!」
「携帯忘れたんだ」

けろっとそう言ってのける間も私の方を一切見ようとしない。何よ何よ何よ、そんなに仕事が大事かこの仕事ばか!仕事と張り合うわけじゃないけど、学校と外との態度の違いにイライラして乱暴にパイプイスに腰掛けた。それでもこっちを見ようとしない。

「カルシウム足りてねぇんじゃねぇの?」
「は?」
「すっげーイライラした顔してる」
「誰のせいだと思ってんの!?」
「俺」
「わかってんなら」
「言うんじゃねぇよ、って?」

ほんっとにムカつく!言いたいことわかってるのにわざわざ人に言わせて、その上最後の最後の台詞をとるなんて!用事があって呼び出したはずなのに何も言わないなんてどういう神経してるのかしら。ラビにバレて、からかわれて、イライラして、その上用事なしだなんて最悪。こうなったら5時間目はベッドで寝てサボってやる。まだ書類を書き続けるあいつを無視してパイプイスから立ち上がってベッドへ向かった。真っ白で清潔なベッドの上にスリッパを脱いで上ると、ブレザーとネクタイを外して布団の上に置いた。布団にもぞもぞと入って目を閉じるとすぐにカーテンのシャっと開く音がした。



無視だ、無視。

「起きてんだろ?なんで寝るんだよ」

なぁって声が聞こえたけど変事なんかする気ゼロ。ため息をはく音がして、スリッパのぺたぺたした音が近づいてきた。ギシとベッドが軋んで布団が引っ張られる感じがした。多分、ベッドの端に座ったんだと思う。

、そんなに拗ねんなよ。仕事なんだから仕方ないだろ」

仕事があるなら呼ばなきゃいいじゃない。ほんとにこの男意味わかんない。何にも言わないで突然学校に現れたと思ったら、自分勝手で気まぐれで、好き勝手人のこと呼び出して、最悪な恋人。

「なぁ、俺が呼び出した理由わかるか?」
「・・・・・・わかってたら怒ってない」
「やっと喋ってくれたな」
「だって、ティキがわるいんだもん」
「ごめんな」

仕事がいっぱいあるんだよってそう言って私の頭を撫でてから髪を梳いた。ティキの優しい声とか大きい手が髪を梳いたりとか、そういうことされるとどんなに怒ってもイライラなんて一瞬で飛んでっちゃって、どっちかっていうと怒ってる自分のほうがガキな気がしてきて情けなくなる。これが大人の余裕ってやつなのかな。だとしたら私は一生ティキに敵わないのかも。彼は私にないものたくさん持ちすぎている。

「ティキが私の学校に来るときの約束覚えてるの?」
「リー以外の生徒に俺らが付き合ってることバレないようにする、だろ?」
「覚えてるならなんでラビにあんなこと言ったのよ」
「あいつだから言ったの」
「なんで?」

ずっとティキの方を向かないで会話していたけど、理由がどうしても気になってくるりと姿勢を変えた。今日初めて見るティキの顔は、少し怒ったような寂しそうな顔。

「今日の朝、あいつと一緒に学校来てなかった?」
「あ、うん。たまたま会ったから」
「二人で楽しそうに笑って、じゃれあって来てなかった?」
「そりゃ、友達だし、ラビとはああいう感じの関係だし」

でもそれとこれと何の関係があるの?って聞いたら大有りだよって言ってティキは一度ベッドを降りてカーテンの向こうへ消えていった。怒ったのかと思って不安になったから起き上がったら、ティキはすぐに帰ってきて白衣を脱いだ。それを私のブレザーの上に乗せて、ベッドに入ってくる。保健室のベッドはシングルサイズだから二人で寝るには少し狭くて、体をずらしたけどティキとぴったりとくっついて寝る状態になった。今更恥ずかしがることなんかじゃないけど学校でこんな風にひっつくのは初めてでなんだか心臓がどきどきしちゃった。そんなこと気にもしないティキは私の体をぎゅっと抱きしめてはぁとまたため息をつく。

「俺はさ、本当は朝を学校に送っていきたいんだ。帰りだって暗いから家まで送っていってやりてぇんだよ。でもそれが出来ない」
「それは・・・私と約束してるから?」
「俺は生徒じゃないから授業中同じ空間で過ごすことも出来ないし、体育の時間を応援するのだってこの保健室からしか出来ない。でもあいつには全部それが出来る。俺が言ってる意味わかる?」
「ええと、つまり、ティキも学生になりたいの?」
「・・・・お前ばか?」
「ばかじゃないもん!」
「嘘。ばかなとこも可愛い」

ばかにされてるんだかほめられてるんだかよくわかんないけど、ティキが笑っておでこにキスしてくれたから怒る気が失せてティキにますますぴたっとくっついた。誰か来ちゃったらどうしようとか、さっきチャイムが鳴ったから授業始まっちゃったよとか考えることはいっぱいあるはずなのに、さっきまで冷たかったティキが二人でいるときみたいに優しいから学校とかバレるとかどうでもよくなった。

「あいつがを狙ってるとしたら不毛な恋はさっさと終わらせるのが身のためだってこと」
「ラビが私のこと好きなわけないじゃん」
「そんなのわかんねぇだろ。鈍いし」
「鈍くないよ」
「鈍いよ」
「鋭いもん!」
「それはない」
「なんでティキにそんなこと言われなきゃいけないのよ!」
「だーってさ、が鈍かったから付き合うまで苦労したし、告ってもわかってなかったし、俺の前でほかの男と平気でしゃべるし。俺がイライラしてんの全然気付かねぇし」
「・・・・・」
「今日だって逆ギレしてふて寝するくらいだもんな」
「・・・・・ごめんなさい」

声は笑ってるけどここで絶対に反抗してはいけないことを今までの経験上から学んでいるから大人しく謝ってこれからは気をつけますって付け加えた。元からラビと神田以外男の子の友達っていないから問題ないと思ったけどふたりと話すときもティキの目につかないようにしよ。でなきゃ(二人の)命があぶないよ。それからティキの教職が危ない。でもほかのおんなのこが仮病のくせにティキせんせーって甘えた声で保健室に来るのすごいいや。ティキは私のものよ!ってさけびたくなるの。そんなことしちゃだめだってわかってるからがまんするけど。あれ、もしかしてティキもこんな気持ちなのかな。だとしたら私すごいいやなこだ!
「ごめんね・・・」
「お、今日はやけに素直だな。さっきまで拗ねて怒ってわめいてたくせに」

冗談めかしてそういうけど今の私には大ダメージ。自分がされて嫌なことを人にしちゃいけませんって小さい頃教わったはずなのに、私はすごく自己中なことして自己中に怒っていたんだから。

「ティキ」
「ん?」
「嫌いにならないで・・・」

今までずっとティキはイライラをためこんで私と一緒にいたのかと思うと、急に不安になって泣きそうになった。だって、そんな嫌な女と付き合わなくてもティキには他にもたくさん女の人が近づいてくるはず。私なんて簡単にぽいっと捨てられちゃう。怖くて怖くてぐりぐりとティキの胸に顔を押し付けて涙を抑えてたら、嫌いになるわけねぇじゃんって優しい声がふってきた。こういう時に本当に私が欲しがってる言葉をくれるなんてティキは反則すぎる。ずるいよ、もっと好きになっちゃうじゃん。

「そんなにが反省してるなら、誠意は態度で示してもらおうかな?」
「・・・・態度?」
「保健室で二人きりっておいしいシチュエーションだと思わねぇ?」

鍵もかけたし、不在の札もドアにはっておいたし。そういってにこにこ笑いながらすでに準備態勢に入ってる。今日の大人な態度のティキにきゅんときてたはずの心が一瞬で崩れ去った気分。
反抗する術、ゼロ。

「ここ、学校ですけど!先生が生徒にそんなことしていいと思ってるの!?」
「保健の授業なら問題ねぇ」

保健室でベッドは使わないようにしよう。私はそう心に誓った。



発展途上の君と僕
(これからも秘密の恋を二人で)



comment!----------------------
なんかあんまり先生関係ないかもしれません(笑)
こんなものでよろしければもらってやってください・・・!!
これからも[ s*k ]とミウをよろしくお願いしますw

ナタデココ中毒の夜桜ココさんに捧げます

2007.11.27 title by アナーキスト