夜の終わりと朝のはじまりの間に、ふと目が覚めた。
そういえば今日はの家に泊まったんだっけ。天井からぶらさがってるシャンデリアが無駄にかいからすぐ思い出せる。
最近はだけにしてあるから怒られねぇけど、付き合ったはじめはよく名前間違えて怒られてたなぁ。
なんとなく昔のことを思い出したらを抱きしめたくなって横で寝ているを抱きしめた、つもりだった。

「あれ?」

がいない。
彼女のやわらかい香りとかぬくもりが残っているからが起きてからそんなに時間が経ってないはずなんだけど。なんで起きたのに気づかなかったんだ俺。
あいつが目の前から消えると俺の中に溢れてくる心配は大抵嫌気がさして逃げた、だ。
家の中が静まりかえってるから余計に心配になってベッドを降りた。部屋を出てリビングに出てみるけどそこにもいない。

?」

小さな声でそう呼ぶと、ジャーっと水が流れる音が聞こえてトイレのドアが開いた。中から真っ青な顔をしたがふらふらと出てくる。
逃げたわけじゃなかったんだとわかると、安心して少し嬉しくなったけど、今はそんなことに安心してる場合じゃねぇ。
彼女の元へ早足で駆け寄り、倒れそうな小さな体を片手で支えた。ほんとにちっこくて細くて、俺の片腕で軽く包み込めるじゃねぇか

「大丈夫か?」
「ティキ・・・おはよ」

こんな時にもはへらりと笑って俺のほっぺたにおはようのキスをしてくれる。ちくしょう、可愛い。
俺も同じように返してから、少し冷えた体を抱き上げてベッドに運んだ。
大きなベッドに小さな体を寝かせてから水とタオルを持って再び戻ってきた。の顔色はさっきより少しよくなっていたけどまだつらそうだ。

「飲め」
「ありがと」

体をゆっくりと起こして、俺が渡したグラスを両手で持ってこくこくと飲んだ。よっぽど喉が渇いていたのか全て飲み干してしまって俺に返されたのは空のグラスだけだ。

「もう一杯いるか?」
「もういらない。大丈夫」
「そうか」

もう一度寝転がるの体にシーツをかけてやって額の汗をタオルでそっとぬぐう。昨日は元気だったし、今も熱があるわけでもない。
俺は病気とかしねぇからがどんな症状なのか全くわかんねぇ。こういうとき、ノアであることが嫌になるな。
ごめんなっていうとつらいのに俺に気を使うのは目に見えてるから、頬に手を添えてごめんなって気持ちをこめて額にキスをした。

「ん」
「寝ろよ。俺の体に何が起きてるのかわかんねぇし、寝てる間に医者呼んできてやるから」
「こんな時間じゃお医者様寝てるよ」
「脅して起こす」
「そんなことしちゃだめ」
「じゃあどうしたらいい?」

ほんとにお前が心配なんだよ。病気知らずって感じで毎日ころころ笑ったり、甘えたり、すぐ拗ねてみたりすると離れたくないんだ。もし不治の病だったらどうするんだよ。
わかんねぇから頭の中はどんどん悪い方向に進んでいっちまって、そっちに集中しすぎて顔に出ていたらしい。

「ほんとに大丈夫なの。ティキが一緒に寝てくれたら治るわ」
「ほんとか?」
「ほんとよ。嘘じゃないわ」

いや、嘘だろ。俺がそばにいるだけで治ったら医者いらねーじゃん。
そう言おうと思ったけどが一生懸命隣の枕をぽんぽんと叩くから首元の汗をぬぐってやってからの隣にもぐりこんだ。
入っていくのと同時に細い腕が首に絡みつく。それに応えるように俺も彼女の体を抱きしめた。

「あったかい」
「お前の体が冷たいんだって。さっき吐いてたのか?」
「うん・・・。ちょっと・・・」

は精神的に弱いから、不安なことがあるとすぐ吐いちまうんだった。最近会ってなかったからってそんなことまで忘れてた。
少しでも体をあっためてやろうと思ってぎゅうっと抱きしめてやるとがくすくす笑ってきた。

「どうした?」
「んー、愛されてるなって思って」
「普段から惜しみなく愛を注いでるつもりですけど」
「だって最近会ってなかったじゃない」

その言葉にドキっとしてを見ると、さっきの嬉しそうな声とはうってかわって寂しそうな目が俺をじっと見つめる。
その顔を見ての不安な原因は俺が此処に来なかったせいだってわかった。
白の仲間とも連絡とってなかったから余計不安になって、また浮気癖が復活したとか何とか考え始めたんだろうな。

「束縛とか、嫌だよね。ごめんね」

わがままでごめんなさいと小さく呟いては下を向いた。


連絡できなくてごめんな。
さみしい思いをさせてごめんな。
不安で体調崩させちまってごめんな。
黒のこと、教えてやれなくてごめんな。



優しく名前を呼ぶとは俺を見た。少し濡れた頬にキスをして、溢れてくる涙を親指の腹でぬぐってやる。

「確かに俺は昔は束縛とか嫌だったし特定の女に限定する気もなかった。
でもに出会って付き合ってから、ほかの女なんていらねぇと思ったんだ。だけでいい。お前が不安になるようなこと絶対しないって決めたんだ」

信じてもらえるかどうかわかんねぇけど、と付け足しておいたけど。
やっぱり過去のことは変えられねぇし、一回そういうことあるとまたやるんじゃないかって不安になるのは仕方ないことだし。
何よりどんな理由があろうとを不安にさせちまったことには変わりない。

「ティキの言うこと、信じるよ。私こそまたほかに女の人がいるのかと思ったりしてごめんね」
「もういねぇよ」
「その言葉を信じるよ」
「おう」
「あのね・・・」
「ん?」
「・・・・・・やっぱりいい」

は俺の腕からするりと抜けてベッドの端っこまで行ってしまった。俺のことが嫌いになったんじゃなくて寧ろ好きすぎてヤキモチやいたが可愛くて仕方ない。笑っちゃいけないと思いつつも、そんなこと言われたのは初めてだから嬉しくてつい顔がにやけちまう。
ベッドの端に逃げていったの腰に腕を回してぐいっと抱き寄せた。

「さっき何言いかけたんだよ」

耳元で囁くとは真っ赤になるのを知ってるから。わざとそうやるとやっぱり真っ赤になってひゃって可愛らしい声を上げた。
そんな反応されるともっと愛おしくなるだろ。

「なんでもないもん」
「いいから言えって」

言わないともっと悪戯するよ?って言うとはその言葉に隠された意味を理解したみたいでと慌ててこっちを向いた。
少し赤くなった頬に濡れた睫毛。
まさか人間を本気で好きになるなんて思わなかったけど、なっちまったもんはしょうがねぇよな。
今のところ誰にもバレてねぇし。ロードなんかにバレたら大変なことになりそうだしな。
まだ言うのをためらってるの額に、瞼に、頬に、唇に。ゆっくりと触れるだけのキスを送ると気持ち良くなったのかとろんとした瞳で俺の胸にもたれかかってきた。

「早く言えって」
「んー・・・」

少し考えてから、俺の耳元でそっと囁いた。


夜の終わり
(朝が来るときっと私達は幸せになれる)




めっさ意味ないお話ですみませ・・・!!
なっぽんの小説の足元にも及びませんが、相互押し付けということでもらってくださったらとても嬉しいです!!
もうほんとに可愛いなっぽんと仲良くできて嬉しいですwこれからもよろしくお願いしますw
2007.04.30